ゼンザイは今が食べ時、先ほどまで紫色だった
汁も大分底のほうまで減って、濃い紫色に変わり、
餅はほどよく溶け、どろどろになった小豆と絡み合
い、われこそはゼンザイの王様とばかりノーブルな
光を放っています。その特上のゼンザイを黒帯組
は憎らしいほど美味しそうに食べているのです。
特大鍋と小さな杓子、このふたつのアンバランス
が招いた不公平、杓子が鍋の底に届くにはゼンザ
イの三分の二がみんなの胃袋に納まっていなけれ
ばならなかった。つまりゼンザイのいちばん美味し
い部分は鍋の底にあって、私が涙さえ流して胃袋
につめこんだものは薄紫色をした、ただの砂糖湯
だったわけです。この悔しさ。
|