丹波小5年の時、教室の掲示板の手の届かない高い位置に美空ひばりのセーラー服姿の
          プロマイドが貼ってあった。いったい誰が貼ったのか。。私にとって、そのプロマイドは聖女
          の輝きを放つ宝物であった。それがほしくてほしくてたまらなかった。死ぬほど欲しかった。
          毎日そのことで頭が爆発しそうだった。なんとかしてカッパラってやりたかった。しかし簡単
          には、カッパラえない。いかにしてカッパラうか、誰にも怪しまれずにカッパラう方法はないか、
          いろいろ知恵を絞った。昼間はまずい。夜はもっとだめだ。。。その結果、私は運動会の日を
          選んだ。この日なら堂々とカッパラえそうだ。

          いよいよ当日、私はガランとした教室に忍び込み、机の上に椅子を重ねて、その上に乗って
          震える手で聖女のプロマイドを剥がし取ったのだった。この時の快感は忘れたことがない。
          外から聞こえる大歓声がさらに心を躍らせた、幼いエクスタシーの瞬間だった。そして時が
          経って、そのプロマイドは何時の頃か、どうしてか、失ってしまっていた。
         
          ところが去年(平成16年の夏)、神田神保町のさる古書店で53年ぶりに失った宝物と再遭遇
          したのである。あの時の快感が俄に甦った。手元が震えたのも同じだった。その値段は500円。
          嬉しいような寂しいような・・・・・
          タテ12.5cm、ヨコ8cmの宝物は今、他の美空ひばりの写真と共に、私の心の引き出しに大切に
          保管されている。たかがちっぽけな物だけど。。



                                     


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